トライとゴールキックによる得点の違いと変更点

ラグビーの試合を観ていて一番わかりにくいのはプレー中のルールですが、分かり易いのは勝ち負けを決める得点の差です。得点の方法はトライとキックがありますが入る点数が違いますので説明しておきます。試合終了時点で得点の多い方が勝ちこれは変わりません。

ラグビーの勝敗は総得点の多い方が勝ちとなります。
「トライが多いから勝ち」ということはありません。

トライの得点

通常のトライの得点は現在は5点です。
ルールの変化とともにトライの点数は変わってきましたが、現在ではトライは5点です。

昔はトライ自体に得点はなくて、その後の得点となるコンバージョンにトライ(TRY)することからついた名前だということです。
ちょっと前、といってもかなり前ですが3点、4点だった時代もありますが、ディフェンスのレベルが上がってきて得点しにくくなったのでトライの価値を上げるために5点とするようになったようです。
後で説明してあるペナルティーゴールの得点は3点です。
キッカーのキック精度があがってきたのでトライをとることに時間をかけるより、ある程度離れたところからでも決められるキックをした方が得点し易いです。
これではおもしろくない、ということからゲームを楽しくするためにトライの得点はあげられた、ということですね。

昔はトライをしても喜ばなかった、相手チームのことを考えて、ときれい事をいう高校の監督がたまにいるようですが、もっと喜べばいい。
観てればわかると思うけど、ワールドカップでもトライしたら思いっきり喜んでるじゃないですか。

「相手のことを考えて」ということに反対するわけではないので別に否定はしませんが、いつまでも古い考えで指導しているから進化しないチームになるんでしょ、と個人的には思います。笑

トライ(T)とは

攻撃側が、敵陣のインゴールでプレイ中のボールをグランディングするとトライとなります。
(自陣のインゴールでグランディングしてもトライではありません。)
インゴールにはゴールラインが含まれますのでゴールラインにギリギリ触れるだけのグランディングもトライとなります。
くどいようですが、「インゴール」にグラウンディングなのでタッチインゴールラインやデッドボールラインなどインゴールに含まれないライン上はダメです。
タッチライン、タッチインゴールラインギリギリに飛び込んでグラウンディングした場合にTMO(TVマッチオフィシャル)で見直すのはそのためです。
ちなみにですが、フラッグはただの目印なので身体が触れていても問題ありません。

もう一つきわどいトライ場所があります。
ゴールポストにまいてあるパッド下です。
パッドの大きさは規約で決まっていてゴールラインから30cmを超えることはないのですが、ゴールラインよりも前に出ている部分があります。

このパッドとグラウンドの両方に接地するようにボールをおさえてもトライとなります。
ディフェンス側としては守りにくい場所なのでたまに狙われるトライゾーンですね。

攻撃側がボールを持って走り込んでもいいし、
反則が無い限り敵味方関係なくインゴールに入れたボールを攻撃側がグラウンディングしてもトライとなります。

ボールキャリアーが走り込んでトライする以外の状況としては、
攻撃側が蹴り入れたボールをオフサイド無しに攻撃側がグラウンディングする。
ゴールライン際で守っていた側がインゴールにいた選手にパスをしたボールを攻撃側がおさえる。
チャージしたボールがインゴールにあり攻撃側がおさえた。
などがよくあるトライの状況です。

ペナルティートライ(2017は試験的に実施7点)

試験実施ルールという試験的に取り入れられるルールが毎年あります。
2017年もいくつかありますがそのうちの1つがペナルティートライの得点7です。
ペナルティートライというのは実際にはトライはしていません。

攻撃側が相手のペナルティーによってトライを阻止されたとき、
「そのペナルティーがなければトライに至っていた」
とレフリーが判断したときに与えられるトライのことです。

このトライは反則場所に関係なくゴールポスト中央でのトライと認定されます。
そのためその後のコンバージョン(2点)はほぼ決まりますので、
コンバージョン無しの「7点」として試験的に導入されたルールです。

2018年正式採用となりましたので、認定トライはコンバージョン無しの7点です。

認定トライのときの注意点

認定トライとなったということは、
攻撃側がトライできたはずのときに、
守備側は反則をしていることになります。

この際、口頭での注意で済めば良いですが、
ペナルティーでも重いペナルティーなので、
 イエローカード(シンビン)かレッドカード(退場)の場合が多くなります。

認定トライはペナルティーを含んだトライなので、
トライされて終わりではないことを十分認識しておきましょう

ペラルティートライのルール自体はもともとありましたが、
元はペナルティートライは5点、コンバージョンゴール2点となっていました。

ゴールキックの得点

ゴールキックによる得点は3種類あります。

コンバージョンゴール(G)

トライが得られた場合には、トライした側がゴールキックによりゴールすることができます。
決まれば(2本のポールの間、クロスバーの上を通過すれば)2点を得ることができ、これをコンバージョンキックといいます。
プレースキックでもドロップキックでもかまいません。
15人制ではトライ後90秒以内にキックしなければコンバージョンは禁止されます。
(7人制ではトライ後30秒以内、ドロップキックのみ。)

キックする位置はトライした地点のフィールドオブプレイ側(インゴールの反対)のゴールライン垂直線上であれば距離の規定はありません。

トライをされたチームはチャージを許されておりコンバージョンは阻止することが可能です。
この際のチャージはキッカーがキックモーションに入ったら(けるボールに近づき始めたら)ゴールラインより後ろからスタートすることができます。
チャージに行くのがはやすぎるとチャージできたとしても、キックがはずれてもコンバージョンのやり直しとなります。
キックが決まればそのまま得点となります。
チャージできれば得点2はなくなります。

キッカーがモーションに入った後であれば、風でボールが転げてもチャージはできます。
キッカーはそのままけるか、ドロップゴールを狙うことが許されています。
風が強い日は味方がボールを押させておくことが多いですね。(これはルール上問題ありません。)

ラインアウトの場合と違って、コンバージョンのときは相手チームは大声を出してはいけません。笑

ペナルティゴール(PG)

ペナルティをされたら再開方法はいくつか選択できますがゴールを狙うこともできます。
このペナルティの後のゴールキックがペナルティゴールで、味方の誰がキックしても良くて、成功すると3点となります。

ペナルティゴールを選択したときは、レフリーにペナルティーゴールを狙う意思表示をしてから1分以内にキックしなければなりません。
一度ゴールを狙う選択をした場合は、その後変更はできません。
(意思表示なくドロップゴールを決めても得点になります。)

味方のプレーヤーは全員キッカーの後ろにいなくてはなりません。
また、コンバージョンとは違って相手選手はチャージすることはできませんし、両手をあげることも大声を出すこともしてはダメです。

ペナルティーをした側のチームは通常のペナルティー同様ペナルティーマークポイントから10m以上自陣よりに離れて立たなくてはなりません。
もしペナルティーキック中に守備側がペナルティーをした場合は攻撃側のアドバンテージとなり、ゴールが決まれば3点、決まらなければ再度ペナルティーとして再開となります。

キッカーがゴールを狙う位置(ボールを置く位置)はマークポイントより後ろでもかまいません。
マークポイントがゴールラインから5mになる場合(反則がインゴールやゴールラインから5m以内で行われた場合)はゴールラインがオフサイドラインとなります。
(ゴールラインよりインゴール側がオフサイドラインになることは全てのケースでありませんけど。)

また、ゴールが決まらなかった場合はそのボールはプレー続行され通常のルールが適応されます。

ここまでみていてもラグビーはめんどくさいルールだと思われそうですが観戦するだけなら、
キックの後、審判の揚が2人ともあがれば「成功で3点が入る」、と知っておけば大丈夫です。笑

ルールを理解しておいて欲しいのはプレーヤー、特に高校生なのです。
PGがポストに届かなくても、ポストに跳ね返されても、はずれてもプレーは続きますから気を抜かずプレーを続けるよう集中してくださいね。
ルールを知って少しでも有利に試合を運んでください。

ドロップゴール(DG)

プレー中に、ドロップキックからゴールすることでドロップゴールとなり3点が入ります。
ゴールが決まる確率が低いのでそれほど多くはみることがないですが、国際レベルのチームがアドバンテージがでたときたまに狙っています。

ただし、プレー中とはいってもドロップゴールを狙えないケースもあります。

ペナルティーではなく、フリーキックを与えられたチームは、
ボールが一度デッドとなるか、(プレーを選手が自由に継続できない状況)
相手側プレーヤーがボールをプレーするか触れるか、
ボールキャリアーに対するタックルが成立するまで、
ドロップゴールによって得点することはできません。

このルールはフリーキックの代わりに与えられたスクラムからも同じように適用されます。

まあ、ほとんど狙うことはないので、これは気にしなくて良いルールですね。

これがラグビーの得点の全てです。

トライだけでは勝てない現代ラグビー?

トライは一度に入る点数が大きくかっこいいですが、デフェンスがどんどん進化している現代のラグビーではなかなかトライをとることはできません。
チームの力の差が出やすい大学以下の試合だとかなりの点数差という試合もありますが、
チームの力が近いチームどうしになればなるほどトライでは勝敗は決まらないといっても良いのではないでしょうか。

PGを2回決めればトライ1回分よりも多い得点になりますし、世界レベルだと1、2点差というゲームも多いですし、PGで勝敗が決まるという場合もあります。

世界の強豪チームはPGを重ねてじわりじわりと差をつけていくということが良くあります。
試合の流れ次第ではPGで点差を縮めてトライ1つで逆転できる、という状況を作り出す場合もあります。

なので、トライだけではなくゴールキックも重要なんです。
総得点で勝敗がきまるスポーツですので駆け引きといったところでしょう。

しかし、観ている側になれば、トライシーンはやはり観たいですよね。
それが応援しているチームのトライであればなおさらです。

2015年ワールドカップの予選で日本代表が南アフリカと対戦したときのことを覚えているでしょうか?

試合終了間際、29-32の3点差で負けている状況でペナルティーをもらったとき、
「PGで同点」ということも考えられたはずです。
予選プールなので引き分けでも勝ち点は入るし、
次からの試合の結果次第では決勝トーナメント進出もなくなるわけではありませんでした。

南アフリカには勝つどころか引き分けたこともないほど惨敗し続けてきた相手です。
そもそも日本はそれまで何度もでているワールドカップで1勝しかしたことなかったのです。
南アフリカに引き分けたというだけでも快挙だったはずです。

当時日本代表のヘッドコーチはエディー・ジョーンズ氏でしたが、立場上当然だとは思える判断だけどPGを指示したらしいです。

しかし、日本の侍達はPGを選択しなかった。
会場はイングランドだけどその瞬間会場中が喝采。

南アフリカの強さは世界が認める強さです。
一方、
日本の弱さは世界が認める弱さです。笑

その日本が南アフリカ相手に勝ちに行くことを選択した。
南アフリカ相手に、
『スクラム組もうぜ!』
というアナウンサーの名言ともいえるセリフがいまだに耳に残っています。

そして、左サイドからフェイズを重ね右のサイド、タッチラインギリギリまで攻め続け、

そして、そして、右サイドから一気に左サイドいっぱいにまでパスをつなぎ、

最後は左すみにトライ!

この瞬間、南アフリカに逆転勝利。

試合は終わってなかったけど、
時間は残り0なのでコンバージョンはけるまでもなく勝ちが決まっていました。

ワールドカップという大舞台で、
トライを決めて南アフリカに初勝利した。

あの感動は観ていた人みんなが感じたのは間違いないでしょう。
PGで同点だったとしたらあれほどの感動はなかった。

ラグビーってものすごく感動できるスポーツなんです。
それはやはりトライがあるからではないでしょうか。

私的な意見で申し訳ないけどプレーヤーに言葉を贈りたい。

毎日の練習きついと思います。
痛いと思います。
おもしろくないときもあるでしょう。

でも、
観ている人は感動しています。
最後まで冷静に見続けられる試合は1つもありません。

あなたたちに感動させられているのです。
15人一体となって、ゴールをうまく使いながらでもいい、トライを狙ってください。

応援しています。